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入れ歯
2025年6月17日
入れ歯の噛み合わせ不良による関節の変形とこだわりの義歯作製
・79歳女性
・噛み合わせが悪いため食べられない、会話中に言葉がつまずく
・左上第二大臼歯のみ残存
・2年前に入れ歯になってから食べられない状態
・和歌山市からご来院
・数年ほど和歌山の歯科医院を変えてみたが改善せず食べられない
・ご来院時は左側でしか噛めていない状態
治療方針
●初日に右上が噛んでいないので左の人工歯の上にレジンを盛って咬合挙上し、左側の高さに右側を合わせています。
※入れ歯の高さ調整を行う場合、歯に直接被せを入れるときとは違い、力が掛かると入れ歯は沈みやすいです。
※上顎の粘膜の厚みは外側の粘膜が薄く、内側(舌側)は粘膜が厚いので、圧が掛かると粘膜(歯ぐき)が変形しやすい状態です。
●今回入れ歯の歯の高さを調整しましたが、どうしても左右の高さを均一にするのが非常に難しいので、粘膜面にゴム状の粘膜調整剤を入れて噛むと入れ歯の内面で粘膜調整剤が移動し、全体的に均一に圧が掛かるような場所で落ち着くように工夫をしました。
●まずは現在の入れ歯で噛めるようにし、今後は上顎の入れ歯を新しく作製する予定です。
顎関節CT画像の矢状断
・普段から強い噛みしめの癖があり、関節頭の前縁と下顎窩の関節結節の後方斜面のところが食いしばりによって異常な力がかかり、関節頭の前縁の一部の皮質骨(白線部)が途切れているのを確認できます。これは、その部分に持続的な強い力が掛かったために表面骨が吸収しくぼみができていると思われます。
その為に、対する関節窩の部分に小さな骨の隆起も認めます。その周囲の関節窩の粘膜が繊維化を起こしわずかな白濁を認めます。
それと同時に関節頭の後方部の関節腔にも白濁を認めます。(黄色の矢印の部分)
これは、日ごろから食いしばりの習癖を持っておられる可能性が非常に高いと思われます。
顎関節CT画像の前頭断面
・右側の関節頭上部半分が表面の白線が消え、硬い皮質骨の吸収を認めます。
・左側関節頭内壁部も一部白線の消失を認め、この両方の特徴から、右の関節により力が掛かっていると考えられます(右噛み)。
今回の義歯製作のこだわり
①患者様のご来院回数の負担軽減
遠方からのご来院の為、出来る限り来院回数の負担を少なくしたく、
患者様の顎の形に合う入れ歯のトレーをつくるための型を初日に取りました。
2回目のご来院の際には新規の入れ歯を作るための型をそのトレーを使用して型取りを行っています。3回目の際には入れ歯の歯並びを調整+噛み合わせの記録も同時に行っています。このことにより通常の来院回数よりも少なくなっています。
②患者様のご来院回数の負担軽減
入れ歯の『前歯の歯並び(歯の並べる角度と向き)』は、男性と女性で大きく変わります。
今回は3回目のご来院の際に、女性らしい歯並びになるようにチェアサイドで直接患者様のお口元を見ながら並べさせていただきました。